灸治療の効果と科学的根拠

 日曜日に、オンラインで開催された全日本鍼灸学会の学術集会に参加しました。

 今回は珍しく、鍼ではなく、灸に焦点を当てた学会です。お灸をすると痕が残ることも多いからか、近年は灸よりも鍼をまず選択する鍼灸師がほとんどになってきています。当鍼灸院でも、他の鍼灸院に比べ、灸治療を行なうことも多いと思いますが、まず最初に鍼での治療を行なっています。

 そのような中ですが、今回は灸治療に焦点を当てた学会が開催されました。そして、ちょうどそのタイミングでデービッド・ジュリアス教授のノーベル賞受賞が発表されました。

授賞理由は「温度と触覚の受容体の発見」。
 ジュリアス教授は1990年代後半、唐辛子の成分であるカプサイシンを使った実験で、痛みや熱を神経細胞に信号として伝えるたんぱく質(受容体)「TRPV1」を発見しました。
 パタプーティアン教授は、微細な針で突いた際に電気信号を発する細胞から、圧力や触覚のように機械的な刺激を検知する受容体を発見しました。
 これらの発見から温度や痛み、圧力などを感じる仕組みの解明が進み、慢性的な痛みをもたらす疾患の治療などにも役立てられています。お灸の効果のメカニズムの解明にもつながる貴重な基礎研究です。

 そして、今回の学術集会では、ジュリアス教授の研究チームの一員だった富永先生の講演もあり、大変タイムリーで興味深い講習会でした。これからの基礎研究の発展が楽しみです。

 灸治療は、一般的に冷え性や不妊症などに用いられることも多いですが、今回は、そうした疾患だけでなく、脊柱管狭窄症などによるしびれ・ふらつきに対する治療や筋疲労などへの臨床報告なども楽しむことが出来ました。

 

カテゴリー: 鍼灸講習会・学会報告   パーマリンク

コメントは受け付けていません。