心身症とは?

心身症とは?【その原因】

 ストレスを受けると、人間の体はどうにかしてストレスに対処しようとします。それが自然な反応です。しかし、強いストレスや慢性的なストレスにさらされると徐々にストレスに耐えきれなくなり、いずれ心身のバランスを崩してしまいます。このように身体的、精神的なストレスが原因となって、体の疾患になることを心身症といいます。『心身症は身体の病気』だが、その発症や経過に心理的もしくは社会的因子が大きく影響しているものと定義されています。ですから、心理治療が大切ですが、身体の治療も行わなくてはなりません。心理面、身体面のどちらも一緒に治療を行うことができる鍼灸治療が効果的が効果を発揮する一つです。
 西洋医学では、人間の体全体をそれぞれのパーツに分けて考える傾向がありますが、東洋的な言葉には『病は気から』という有名な言葉があります。この言葉からも、心と身体の深い関係を見て取れるのではないでしょうか?他にも頭痛のタネとか肩の荷が下りる、肝を冷やす、断腸の想いなどの表現も同様です。また、東洋医学には、心身一如という言葉もあり、心と身体を一つのものとして考えています。心と身体は切り離せない繋がりが有り、ストレスにより身体に変調をきたしてしまうのが心身症です。
 下痢や便秘、息切れ、頭痛、胃炎、アレルギーなど、不快な体の症状の裏には、ストレスによる心理的な問題が隠されていることが少なくありません。
 心身症になる最も特徴的なかたは、自分ではストレスを感じず、元気で悩んでいないと思い込んでいます。難しい言葉ですが、これを失感情症(アレキシサイミア)といいます。この漢字を見ると、感情鈍麻や無感動のように感情の変化を失った状態という印象を受けるかもしれませんが、あくまでも感情を認知することの障害です。ストレスの受け止め方や自分自身の感情を認識することが苦手ということです。
 この状態が周囲の人々に心理的問題はないという誤解を与えますし、本人も結果的に環境に過剰適応してしまいます。本当は辛いのですが、それを感じず辛いという意識がほとんどありません。辛いと感じていなくても、本当は辛く身体は悲鳴をあげているので、その人の内面にうっ積したストレスが身体臓器を通して下痢や頭痛など様々な症状で現れてしまいます。認識してくれない辛さを身体自身が悲鳴をあげて教えてくれている状態です。
 この事を理解しておかないと、本人はもとより、周囲の者も患者さんのことを適切に理解できず、身体の治療だけをして、心は忘れ去られます。あるいは、心に焦点を当てると、違和感をもち、自分はそのように情けない人間ではないと怒り出すこともしばしばあります。
 繰り返しになりますが、心身症の人は、自己の精神的葛藤やストレス、あるいは身体的不調を自覚したり言語化したりするのが不得意であり、社会生活に対して過剰な適応状態にあります。
 通常の人なら悲鳴をあげるようなストレス状況にあっても、不平ひとつもらすことなく、人一倍体力に自信があり、バイタリティーにあふれているといったタイプの人が、突然、狭心症や消化性潰瘍に倒れるというような感じです。

心身症とは?【その症状】

 心身症の症状の表れ方は多彩であり、どの器官にどのような症状が出るかは人それぞれです。神経性皮膚炎,関節リウマチ,気管支ぜんそく,本態性高血圧症,消化性潰瘍,潰瘍性大腸炎,甲状腺機能亢進症は心身症と考えられています。

●呼吸器系
気管支ぜんそく、過換気症候群
●消化器系
反復性の腹痛、周期性嘔吐、過敏性腸症候群、便秘、下痢、消化性潰瘍、神経性食欲不振症過食症など。
●循環器系
心臓神経症、頻脈発作、高血圧症、狭心症など。
●泌尿器系
神経性頻尿、夜尿症など。
●知覚・運動系
知覚・運動まひ、痙性斜頸、チック
●内分泌系
甲状腺機能亢進症、糖尿病など。
●皮膚
アトピー性皮膚炎、じんま疹、円形脱毛症など。
●その他
頭痛めまい、睡眠障害(不眠)、眼精疲労など。

 一般には身体疾患として扱われる病名が多くみられますが、患者さんの病歴を詳細にみると、日常生活における行動パターンや精神面の歪みが病気の発生と悪化に深く影響していると考えられる事があります。
 これらの疾患は、精神疾患としての色彩が濃厚なものと身体疾患としての色彩が濃厚なものの二つに大別できます。つまり、過換気症候群や心臓神経症など、組織病変をともなわない機能性の障害は精神疾患に近いものに、消化性潰瘍や狭心症など、組織病変をともなう器質性の障害は身体疾患に近いものに相当します。
 狭い意味での心身症といえば、身体疾患に近いものをさす傾向があります。とくに、精神疾患に近いものでは、不安が身体症状をひきおこし、その身体症状がさらに不安を増すという神経症的な悪循環の構造がみられます。しかし、いずれにしても心身症とは、精神疾患にも身体疾患にも分類できない、一種のグレイゾーンに位置するといえます。

心身症とは?【その治療】

 心療内科など病院での心身症の治療には自律訓練法や系統的脱感作法などの行動療法が活用されます。
 いずれにせよ患者さんは自分の病気を純粋な身体疾患であると思いこんでいる場合が多いので、治療としてはまず身体面の治療が必要です。徐々に患者さん自身の内面に注意を促し、自己の行動パターンや根本的な心理的葛藤や性格構造の異常を自覚を促していきます。
 また、これらの治療と並行して、病院では緊張をやわらげ、気分をひきたてる目的で、抗不安薬や抗うつ薬などの向精神薬が用いられます。
 前述したように、東洋医学には心身一如(元々は仏教用語で有り身心一如ともいう)という言葉もあり、心と身体をともに治療していくものです。当鍼灸院にも身体の病の方も心の病の方も多く来院されています。もちろん心身症にも鍼灸治療は有効な治療法です。ぜひ、お試しく下さい。
 鍼灸治療には様々な流派が有り、鍼灸師毎に鍼灸治療の仕方が全く異なると言われています。当鍼灸院では、東洋医学に基づいた積聚治療という方法で鍼灸治療を施しております。積聚治療は、全身に鍼を接触させて行って治療を進めていきます。整形外科的な疾患であれ精神疾患であれ病名にとらわれることなく、どんな病気でも全身の調子を整えつつお悩みの症状を治療していきます。
 積聚治療では、お身体の不調の原因は『冷え』にあると考えています。ここでいう『冷え』という言葉は物理的に冷たいというだけのことではありません。簡単に書くと生命力の低下です。鍼灸治療を施すことにより、身体を芯から温め、冷えを取り、症状をとっていきます。お身体の不調のその原因から取り除く、根本からの治療を行います。治療を続けることにより、様々な症状が緩和していき、健やかに日々の生活を送ることができるようになります。
 病院(内科、精神科や心療内科)での治療で改善しなかった時や早くつらい症状から解放されたい時など心身症でお悩みの方は、お早めに鍼灸治療をお試しください。

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