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不安感が強く、眠れない方の症例
【患者】 30代 女性
【主訴】 不安感、不眠
日中不安感は常に強くある。また毎晩3回ほど夜間に覚醒してしまう。
【経過】 来院一月ほど前に卵巣(左右とも)嚢腫の手術を行なう。
術後職場復帰した頃から眠れなくなり、不安感も強いため現在休職中。
動悸や肩首のこりもひどくなった。
【その他】 7年前に結婚。20歳から現在の職場で働く、4年前から現在の部署で仕事。
3年前に階段から転落
2年前から生理痛がひどくなる。
来院35日前に卵巣嚢腫の手術を受ける
サプリ・嗜好品無し。就寝時に睡眠導入剤を服薬
朝食は抜くことが多かったが、現在はパン、サラダ、目玉焼きを食べている。昼は麺類が多い。
【治療】
《 初診 》
腹部の手術痕は4カ所にメスを入れた痕が残る。臍(おへそ)は強い圧痛及び冷感が診られる。他の3カ所は感覚が鈍くなっている様子。
手術痕以外では、下腹部に非常に強い圧痛が診られる。他に頚部、胸部、頭頂部、尾骨に圧痛。
お腹全体に優しく鍼を接触させた後、右の手首のツボを使い脈の調整を行なう。
その後、下腹部の圧痛が非常に強いため、腎虚として背中の治療を行なう。(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。腎虚と言っても、『腎臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
陰虚状態とみて、初診であることも考慮に入れ第一方式にて背中に鍼を行なう。
基本的な治療の後、腹部を確認すると最初に比べて緩和しているものの臍及び下腹部共に圧痛が強い状況。臍の冷感も残っているため補助的に臍に暖かいお灸を行ない初診は終了。下腹部に若干圧痛が残る。
《 2診目(初診から5日後)から4診目(初診から19日後) 》
初診の治療後、大分寝れるようになった。また不安感もかなり楽になったとのうれしい反応。夜間の覚醒もなくなったとのこと。ただし、就寝前の服薬は依然として続けているとのこと。この間に生理もあったが体調の悪化もなく過ごせた。
初診時と同様の基本的な治療を行なった後必要に応じ、背部に暖かいお灸を行なったり、下肢の鍼、臍へのお灸を行なう
《 5診目(初診から26日後)から7診目(初診から54日後) 》
5診目から時短で仕事に復帰する。復帰前後も不安感の増加はなく安定して過ごせている。また、睡眠も良好。便通、生理も良好の状態。
治療内容は基本的な治療の後、必要に応じこれまで同じような補助的な治療を加える。
経過が安定しているため7診目にて治療を終える。
【まとめ】
不安感や不眠は症状の程度やいつ頃からなのか等により、治りやすい方もいればなかなか治らない方など様々です。
この方の場合、不安感は非常に強い感じでしたが、発症してから一ヶ月ほどという比較的早い段階で鍼灸治療を受けに来られたので回復も早く良好な治療効果を得ることが出来ました。
また、こうした精神的な症状の場合、いつの間にか現在の症状が診られるようになったという方よりも、あの時からとはっきりエピソードのわかる方の方が回復しやすいともいわれています。この方の場合、卵巣嚢腫の手術の後からとはっきりしていた事、そして実際に手術痕に顕著な反応が見られたことも良い治療結果に結びついたと思われます。
出来ることなら、『卵巣嚢腫の手術をしたから体調が悪くなった』ではなく、『なぜ卵巣嚢腫になったのか』を考え、3年前の階段からの転落及び頚部の顕著な圧痛にも治療を加えていきたかったのですが、自覚的に体調の良い状態が続いているため治療を終えることになりました。
当鍼灸院では、来院を継続的な来院を無理に促すようなことは一切しておりませんが、現在の症状にだけ注目するのでなく、未病を治す事にも患者さんの視点を向けてもらえたら治療家としてうれしいなぁと感じさせる症例でもありました。