排尿障害とは?

排尿障害の 概要 ( 排尿困難  尿失禁  頻尿  排尿時痛  尿閉 )

排尿障害の 治療 と 予防法(骨盤底筋体操)

排尿障害の 当鍼灸院での治療 と 当鍼灸院での臨床例

すずめの森はり灸院

排尿障害  【概要】

 人間の生理現象の一つである尿を出すという事、それに何らかの障害が出てしまうことを排尿障害とまとめていうことがあります。多くの人が悩んでいますが、気恥ずかしく、他人に相談せずに一人で悩んでいる方も多い疾患です。
 排尿障害に含まれる問題は多数ありますが、代表的なものには次のようなものがあります。

等があります。
 男性は、女性に比べて尿道が長く、前立腺を持っています。そのため、男性には排尿困難が起こり易い問題です。
 女性は。尿道が短く、前立腺はありません。そのため尿失禁が起こりやすくなります。


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尿が出にくい(排尿困難)

 尿がなかなか出ない。または勢いよく出ずにチョロチョロとしか出ない状態。中高年の男性では前立腺肥大症の可能性があります。尿がなかなか出切らないので残尿感を感じることもしばしば見られます。
 前立腺や膀胱、尿道に明らかな異常がない場合は、神経因性膀胱かもしれません。

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尿がもれる(尿失禁)

 通常なら尿意を感じてもある程度我慢できます。しかし、尿失禁の方は尿意を我慢できなかったり、尿意そのものを感じなかったりし、自分の意思によらず尿を排泄してしまいます。
 尿失禁の原因は膀胱や尿道括約筋の障害であることが多くみられ、骨盤底筋体操(ケーゲル体操)が有効です。高齢の女性、特に出産歴の多い方によく見られます。
 悩んでおられる方は実は大変に多いのですが、恥ずかしいので我慢している方がほとんどです。一人で悩まずにご相談ください。
 尿失禁は、次の四つに分類されます。

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尿の回数が多い(頻尿)

 『尿が近いとか、尿の回数が多い』という状態。人により異なりますが一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。
 過活動膀胱や糖尿病、あるいは膀胱炎などの尿路感染症、心因性のもの等が考えられます。
 夜間、排尿のために起きなければならない症状は夜間頻尿といいます。糖尿病や水分の摂り過ぎ、うっ血性心不全、腎機能障害、過活動膀胱などで起こります。

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尿が出るときに痛い(排尿時痛)

 排尿時に痛みを伴うもの。尿道の感染症や結石等が考えられます。

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尿がでない(尿閉)

  尿がまったく出ないという状態。この状態は一つには、腎臓で正常に造られた尿が膀胱まで運ばれ貯まってはいるが、排尿できないという状態があります。この場合は、神経因性膀胱や前立腺肥大症、子宮がんなどの術後等に見られます。
 尿が出なくなるもうひとつの状態は、腎臓で尿が造られない状態です。いわゆる腎不全です。


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排尿障害 【治療】

 原因疾患により異なりますが、前立腺肥大や感染症などが原因の場合は、病院(泌尿器科)では投薬治療がまず行われます。その他には導尿が用いられることもあります。
 また、頻尿(夜間頻尿)には生活指導も重要です。過剰な水分摂取を控えるようにしたり、就寝前にアルコールやカフェインの摂取を控えるようにしてください。

骨盤底筋体操(ケーゲル体操)

 頻尿や尿失禁は、筋力の低下もひとつの要因になります。そのため、排尿に関わる骨盤底筋を鍛えることが尿失禁の予防にもなります。
 骨盤底筋体操は、横になっていても、座っていても、立っていても行えます。どんな姿勢でもできるので、やろうと思えばいつでもできます。

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当鍼灸院での治療

 鍼灸治療には様々な流派が有り、鍼灸師毎に鍼灸治療の仕方が全く異なります。当鍼灸院では、東洋医学に基づいた積聚治療という方法で鍼灸治療を施しております。積聚治療は、全身に鍼を接触させて行って治療を進めていきます。頻尿であれ、尿失禁であれ、どんな症状でも全身の調子を整えつつお悩みの症状を治療していきます。排尿のトラブルだからといって、泌尿器を診たり、触ったりはしませんのでご安心ください。
 積聚治療では、頻尿などお身体の不調の原因は『冷え』にあると考えています。ここでいう『冷え』という言葉は物理的に冷たいというだけのことではありません。簡単に書くと生命力の低下です。
 ですから、排尿行為に問題があるからといって、泌尿器だけを治療するのではなく、全身的な治療を行います。そのようにすることにより、症状の本当の原因となっている『冷え』を取り除き、症状を緩和させていきます。
 鍼灸治療を施すことにより、身体を芯から温め、冷えを取り、症状をとっていきます。排尿障害という症状だけを取る一時しのぎの対症療法ではなく、問題を生じさせてしまった身体の内部の原因から取り除く、根本からの治療を行います。
 排尿トラブルのつらい症状から早く解放されたい時は、お早めに鍼灸治療をお試しください。


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排尿障害 【臨床例】

【症例 頻尿(膀胱炎)】

 柏市在住 30代 女性
主訴 : 3、4年ほど前から繰り返し膀胱炎を起こし、頻尿に苦しんでいる。
     昼間は一時間に二回。就寝後は4、5回ほど尿意で起床。
既往歴: 幼少期より、蚊に刺されるだけで直径数センチにわたり、1週間ほど腫れあがる。鼻血も頻繁に有り。いずれも現在まで同様
     小学3年 自転車事故。胸部打撲
     中学時代 歯列矯正
     高校時代 右足関節複雑捻挫。他、左右とも捻挫多数
     18歳  交通事故。右膝及び頭部強打。しばらく記憶障害
     19歳  交通事故。坐骨(骨盤)骨折、左前腕骨折(手術)、左手関節脱臼(整復ミス、現在もずれたまま。)。以後、左前腕は常にしびれ、痛む状態
     23歳  潰瘍性大腸炎。ステロイド服薬し、体調悪化。以後漢方薬に切り替え症状大幅に緩和。炎症所見は現在も有り。
           頭部打撲
     36歳  ウイルス性髄膜炎
     37歳  包丁も持てないほどの手のこわばり。両手とも。現在は緩和。
他  : 飲酒は毎日ワインを一本。肝機能の異常や中毒症状は無し。
     出産歴1回。産道が狭く急遽帝王切開。
所見 : 帝王切開の手術痕は感覚鈍麻。左前腕手術痕は、触れなくても強いしびれと痛み。
     下腹部や臀部は、手を触れるだけで非常に強い痛み。頚椎も同様。

【治療】

 積聚治療の基本治療を行う。補助治療として頸部や右足の指の付け根のツボを刺激。臀部は皮膚に軽く手を触れるだけで強い痛みがあったが、うつ伏せの状態での治療中にかなり減少。
 初回治療中に2度トイレに行くほどの頻尿。
 アルコールの摂取は、厳重に注意。以後すぐに飲みたいという気持ちも減少し、アルコールの摂取が大幅に減量、。
 初回の治療後夜間の頻尿が2回に減少。二診目(初診から五日後)から4診目(初診から14日後)の間は、治療中にトイレへ行く事が無いかあるいは一度行くかという状況。夜間頻尿は、1回から3回程度。この間は積聚治療の基本治療をした後、長野式の傷治療(皮膚及び骨)や頭部オ血治療を補助的に加えています。治療後には各古傷の痛み、しびれはなくなっているが、数日で元に戻ってしまう状況。四診目に頸部の古傷に対し、治療処置を行う。
 5診目(四診目から7日後)。四診目以後、夜間頻尿の無い日が3日間続いた。昼間も気にならなくなり、治療中のトイレも無し。右膝関節の打撲痕に灸を加える。
 五診目以後、排尿に関するトラブルは無し。

【考察】

 皮膚、粘膜症状は幼少期からあったが、高校程度までは比較的健康な日々を過ごしてきた方です。しかし、高校以後、体調を崩すことが多くなり、大病も患う事になりました。
 時系列に考えていくと二度の大きな事故が問題のようです。これらの事故により頸部や骨盤、右足、左手に大きな外傷を受け、西洋医学的に治っていても痛みやしびれが常に強くある状態でした。本人は、骨折したら自分のように皆一生痛みやしびれが続くものと思っていたそうです。
 このように痛い状態が続いているという事は、東洋医学的に診るとこれらの外傷が十分に治っていないということです。これらの外傷が元となって精気の虚(冷え)を生み出し、きちんとした治療をしなかったために徐々にその冷えが強くなり、頻尿や膀胱炎という症状を生み出したと思われます。
 尿は暖かい事からも明らかなように身体から熱を排出する役割も持っています。膀胱内に貯留された尿は身体から熱を吸収し、それを排泄することにより体内の熱を調整していると考えられます。膀胱内に貯留されている時間が長くなるとそれだけ身体から熱を吸収し、冷やすことになります。
 この方は、度重なる外傷により強い冷えが生じているので、これ以上身体を冷やさないように尿意を頻繁に催していると考えられます。そのため、この方の頻尿の治療は頚部を初めとした外傷の治療を中心に行うこととしました。西洋医学的に考えたらありえないことかもしれませんが、処方薬を服薬しても3、4年間繰り返していた膀胱炎もその後、再発することなく初診時から21日、5回の治療で頻尿の治療を終えることができた事が何よりの証拠です。
 参考文献 : 『積聚治療』 小林詔司著 、医道の日本社


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