椎間板ヘルニアとは?

 人間の背骨は、一つの骨ではなく多数の骨(椎骨)が積み重なって形成されています。その骨と骨の間にあるのが椎間板です。椎間板は、背骨(脊柱(せきちゅう))に加わる衝撃をやわらげるクッションの役目をしています。
 椎間板を輪切りにして見てみると、中央にゼラチンのような、やわらかい髄核(ずいかく)という部分があります。髄核は弾力性があります。その髄核の周囲には繊維輪(せんいりん)という、比較的かたい軟骨が幾重にも囲んでいます。弾力性のある髄核を包み込む殻のようなものと考えてください。これにより脊柱に上下から加わる力を分散させ、衝撃を和らげます。
 老化や激しい運動などで徐々に殻(繊維輪)がもろくなり、髄核が外に飛び出してしまうことがあります。これが椎間板ヘルニアです。激しい痛みやしびれを引き起こしてしまうことがあります。
 椎間板ヘルニアは、斜め後や後方(背中側)に生じることが多く見られます。そこには脊髄や脊髄から分かれて伸びてきた神経(神経根)があるため、それらが脱出した髄核によって圧迫され、痛みなどの症状がおこります。
 体重のかかる腰におこることが多く見られます。首(頸椎)におこることもありますが、腰椎に比べると頻度ははるかに低いものです。頸椎におこった椎間板ヘルニアは、手の痛みやしびれの原因になります。


椎間板ヘルニアとは?【その症状】

 ヘルニアのおこった部位によって症状は異なります。また、髄核の脱出の程度と症状の強さは必ずしも比例しません。ヘルニアの程度は軽いのに、症状が強いこともあれば、その逆のこともあります。ヘルニアがあってもほとんど症状のない人も多く見られます。ヘルニアと腰痛には必ずしも関係性はなく、ヘルニアが原因と思い、手術しても腰痛が全く改善しないということもよく見られます。

腰椎の椎間板ヘルニア

 重いものを持ったり、腰をひねったりしたときに突然激しい痛みがおこる、いわゆるぎっくり腰のかたちで発症することがあります。
 発症直後は、激しい痛みで動けませんが、たいてい2、3週間で軽くなり、その後、慢性化します。
 また、何のきっかけもなく、鈍い腰痛や手足のしびれ感で始まることもあります。しばらくすると症状は消え、また、いつとはなしに再発するといったことをくり返す、慢性型で始まることもあります。
 急性であれ慢性であれ、腰椎におこった椎間板ヘルニアでは、多くは腰痛のほかに、左右どちらかの臀部(おしり)からつま先までの痛みやしびれを伴います。(坐骨神経痛を参照)せき、くしゃみ、あるいは排便時にいきんだりするだけでも痛みが強くなることも見られます。
 顔を洗うときに前かがみになったり、中腰など、腰を丸める姿勢でも痛みが増悪します。逆に背中をまっすぐに伸ばしたり、あおむけに寝た姿勢で安静にしていると痛みは軽くなります。
 さらに、痛み、しびれのほかに、脱力感、知覚障害がみられ、つまずきやすくなったりすることもあります。筋肉の萎縮(いしゅく)、筋力の低下が現われることもあります。


頸椎の椎間板ヘルニア

 頸椎に椎間板ヘルニアがおこると、左右どちらかの腕に放散する痛み、しびれ、脱力感などが起こったり、首の後ろ側が痛むため動かせなくなったりします。
 髄核が後方中央に大きく飛び出した時は、神経根よりも脊髄を直接圧迫するために、しびれ感が足の先から上のほうに上がり、胸のあたりから腕までしびれます。
 そのため、歩行障害がおこりやすく、とくに階段を昇り降りするときによろけたりすることがあるので、注意が必要です。

椎間板ヘルニアとは?【予防】

 背筋や腹筋は背骨への負担を少なくする働きがあります。いわば、自然のコルセットです。
 激しい筋力トレーニングは必要はありませんが、適度に身体を動かす事により腹筋と背筋の筋力維持・向上に心がけましょう。
 体重が増加すると背骨への負担の増加につながり、危険性が増加します。腹八分目を心掛けてバランスの良い食生活を送るようにしましょう。
 また、合っていない靴は足腰に負担がかかるます。靴選びも慎重に行うようにしましょう。近年、デザインや値段が重視されるあまり健康に良くない靴が非常に多くなっています。シューフィッターのいる靴屋で足の様々なサイズを測定してもらい、きちんとした靴を履くようにすることも効果的です。

椎間板ヘルニアとは?【診断と治療】

 病院(整形外科)ではまず診断のために症状の経過、神経学的所見、画像診断が用いられます。
 前述したように近年MRIなどの普及で、必ずしもすべてのヘルニアが痛みやしびれの原因となっているのではなく、無症状の方も多いことがわかってきました。ですから、たとえ椎間板ヘルニアが存在していると病院(整形外科)で言われても、今悩んでいる症状がヘルニアによるものなのかどうかこれまでの経過と神経学的所見から区別しなければなりません。判断の難しいところです。
 特に膀胱障害や排便障害などの症状がみられるときはまず病院(整形外科)で精密検査を受けてください。
 ヘルニアの場合、病院ではよほど症状がひどくなければ、保存療法が取られるます。保存療法とは簡単に言えば特に治療せずに自然治癒力に任せて経過を観察するというものです。自然経過は大部分は良好です。3ヶ月で60%が自然に改善したとしたとの報告もあります。このことからヘルニアの大部分は病院で手術しなくても改善が期待できます。しかし、多くの患者が自然治癒しますが、再発も50%にみられます。
 自然に治ることが多いといっても長いあいだ痛みと戦うのは苦痛です。鍼灸治療を行うことにより、自然治癒までのかかる時間が短縮されたり、痛みやしびれといった症状が軽減されたります。
 また、自然治癒しないような時や再発を繰り返すような場合でも鍼灸治療は有効であることがしばしば見られます。ストレス社会の現在、ストレスのない人はいません。鍼灸治療は、ストレスなどにももちろん効果的であり、ストレスを原因とする腰痛にも効果的です。つまり、医者に原因不明の腰痛と言われても鍼灸治療が効果的であることに変わりはありません。ヘルニアの際は、お早めに整形外科や整骨院だけでなく、鍼灸院を受診なさってください。
 当鍼灸院では積聚治療という方法で鍼灸治療を施術していきます。腰椎ヘルニアであってもそれは同じで腰に直接太くて長い鍼を刺すのではなく、お腹や背中等全身的に鍼を優しく接触させながら治療をして行きます。ブスブスと刺さなくても軽く接触させていくだけでもお身体は大きく変化し、治癒へと向かっていきます。
 ヘルニアの場合においても、ヘルニア自身が問題を起こしていると考えるのではなく、ヘルニアを起こす原因となった『精気の虚(生命力の低下、もしくは冷え)』に着目して治療を進めていきます。昔の怪我など一見ヘルニアとは関係のないように思える事柄なども初診時にはお尋ねしますが、それらが長い年月をかけて身体を『冷や』し、ヘルニアの原因となっていることもあるからです。東洋医学は、症状を取るだけの対症療法ではなく、身体の芯から元気になることができます。
 ヘルニアの場合、足の指先等にちょっと熱めのお灸をするかもしれませんが、米粒ほどの大きさで一瞬熱さを感じるだけです。一度、鍼灸治療をお試しになってみることをおすすめいたします。


【関連ページ】

上へ戻る