先生! そこじゃありません!

 治療をしていると時々、タイトルのように、『そこじゃありません。こっちです』と言葉をかけられることがあります。

 痛いところと反対に鍼をすることがあるからです。というか、多くの場合、反対側にします。そのため、間違えてる、勘違いされたと感じるようです。でも、間違いではありません。反対側で合っているんです。

 東洋医学には、巨刺(こし)という言葉があります。

 東洋医学の古典である霊枢には、≪八に曰く巨刺と。巨刺とは、左は右に取り、右は左に取る≫ とあります。左に病があれば右に鍼をし、右に病があれば左に鍼をする、というものです。

 他にも似たような言葉で、遠導刺という言葉もあります。

 同じく霊枢に、≪病、上に在れば之を下に取り、病、下に在れば高きに之を取る。病、頭に在れば之を足に取り、病、腰に在れば之を膕(=膝窩)に取る≫ともあります。頭痛など上の方に病があれば下に鍼をする。下の方に病があれば上に鍼をするというものです。

 西洋医学では、悪いところに直接治療する。そこしか診ないのが、普通です。それに慣れてしまっているので、違和感を感じる方が多くいます。しかし、東洋医学では、お身体全てを診ます。そのため、患部と離れたところや反対側に鍼をすることがあります。実際に臨床をしているとその効果を感じることはしばしばあります。逆に悪い所に直接すると悪化したり、一時的に良くなってもすぐにぶり返すなんてこともしばしばです。

 当鍼灸院では、積聚(しゃくじゅ)治療という流派の鍼灸治療を行なっています。積聚治療では、こうした点を踏まえて基本的に悪いところ離れたところに鍼をする事が多くあります。ですから 「間違えられた!」 なんて、思わないで安心して治療を受けてください。

追記1 他にも、繆刺(びゅうし)という巨刺と同じような意味の言葉もありますが、ややこしくなるので今回は触れていません。

追記2 患部に外傷の既往がある際など、直接患部に鍼を行なう事があります。また、お灸の際は巨刺、遠導刺は行ないません。

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