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帯状疱疹後神経痛の治療例3

【主訴】 帯状疱疹後の神経痛
【患者】 50代 女性
【主訴の経過】 来院三ヶ月程前に左の肩甲骨から肘にかけて痛みが出始める。その頃、頚椎の問題で整骨院に通っていたため、通院時に相談すると頚椎の問題で痛みが出ているのでしょうと判断。
 痛みが緩和しないため2週間後に病院を受診し、帯状疱疹の診断をされる。病院での治療を開始するも神経痛が残存し、当鍼灸院を受診。
【既往歴】
 小1 背中にあったあざの除去手術。
 小2 左腕骨折。
 高1 部活で外くるぶしを骨折。左右不明
 20代から偏頭痛に悩まされるようになる。(年間1,2回程度)
 40代 子宮筋腫手術。
 睡眠・排便良好。嗜好品特になし。食生活も和食中心の健康的な物。出産歴3人、妊娠・出産時の問題なし

  

【治療】
《 初診 》
 積聚治療の基本的な治療を行う。下腹部に強い圧痛が診られる。また、小学生の頃に手術したあざの手術痕に冷感が診られ、背部の治療を行っている際の重要な指標とする。基本的な治療後に補助的な治療として手術痕にお灸を加える。
 下腹部の圧痛が残っていたために、足の対応する箇所にも補助的に鍼を行う。来院時は軽く皮膚に触れるだけで診られていた痛みも、治療後は触れても強めに押しても痛みを感じなくなり、自覚痛もなくなったことを確認して初診時の治療終了。

《 2診目から4診目(初診から14日後から31日後) 》
 初診の治療後、数日間痛みを感じずに過ごせた。その後、幾らか戻ったが来院時の痛みを10として10段階で評価すると6程度の痛み。治療は初診時とほぼ同様で、積聚治療の基本的な治療に加えて背中の手術痕の治療や足の治療、あるいは手の指先のツボに補助的な治療を加える。
 痛み止めはなくても大丈夫そうだが、前のようになるのが心配でつい飲んでしまう。服薬量は少しずつ減り、4診目の頃には当初一日4回服薬していたものが、朝のみとなる。

《 その後 》
 5診目以降、帯状疱疹後の痛みは出ずに良好な経過をたどる。帯状疱疹の痛みを感じなくなると今度は、発症前から整骨院で治療をしていた頚椎症の症状が気になりだし、二回程治療を行う。その間、帯状疱疹後神経痛は症状がみられなかったので、取り合えず治療終了。

 

【この方の治療を振り返って】

 痛みにはそれぞれ特徴があります。安静時に痛いのか、動いたときに痛いのか。チクチクと痛いのか、重い痛みがズーンと続くのかなど痛みの原因によりさまざまに異なります。帯状疱疹の痛みはチクチクとかビリビリ、ピリピリと表現する方が多くみられます。
 痛みの原因により特徴があり、ある程度鑑別することができるため、『どこどこが痛い』という患者が診えた場合、その痛みがどんな痛みで、いつ痛むのか、どういう時に痛みが悪化あるいは楽になるか、どのあたりが痛むのか、痛みが出始めてからどのような経過をたどっているのか等、様々な事柄を詳しく聞くことが必要です。

 この患者さんは頚椎症もあり、発症前から近所の整骨院に通っていました。その期間中に帯状疱疹が発症しましたが、残念ながら整骨院の先生は詳しく耳を傾けることなく、いつもと同様の頚椎症によるものと判断してしまいました。そして結果的に帯状疱疹の治療が遅れることにもなってしまいました。
 頚椎症でも痛みが出る箇所なので、いつも見ている患者さんだと、つい『いつものだな』と安易に判断しがちになります。しかし、患者さんはいつもと痛みの感じが違うことを訴えていましたので、もう少し耳を傾けていたら、あるいは患部を直接見ていたら、このような経過とはならなかったことと思います。

 長期的に来院されている方でも機械的な治療にならないよう、毎回、心から耳を傾けることの重要性を改めて考えさせられた症例です。

 この方は、その後、頚椎症も緩和しましたが、悪くもないのについ近所のマッサージ(無資格と思われます)に行った所、再度悪化し、当鍼灸院まで一時間以上かけて再び来院することになりました。国家資格を持っているからそれだけで安心。とはなりませんが、無資格の自称治療家よりはきちんとした教育を受けている分、安全です。大切な自分や家族の身体を誰に預けるのか吟味することも大切です。


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