1. すずめの森柏鍼灸院トップ >
  2. 適応疾患 >
  3. 帯状疱疹後神経痛とは? >
  4. 帯状疱疹後神経痛の治療例2

帯状疱疹後神経痛の治療例2

【主訴】 帯状疱疹後の神経痛
【患者】 80代 女性
【主訴の経過】 来院三ヶ月半前に発症。すぐに病院での治療を開始するも神経痛が残存。神経ブロック注射や抗うつ剤なども試したが痛みがなくなることが片時もない状況。
 痛みがひどいため食欲も著しく低下し、ほとんど食物を摂取していない、また、痛みのために睡眠もあまり取れず、日中も動けずに寝てばかりの生活が続いているとのこと。
【既往歴】
 20代で子宮外妊娠のため手術。
 50代で胆石の手術
 70代から糖尿病。現在まで血糖値のコントロールは出来ていない状況。
 骨粗鬆症もあり、70代の時に転倒して胸椎骨折。

【治療】
《 初診 》
 積聚治療の基本的な治療を行う。10年ほど前に骨折した箇所と思われる胸椎に現在も圧痛が残っているため、背部の治療を行っている際の重要な指標とする。基本的な治療後に補助的な治療として腹部の手術痕を治療する。来院時は軽く皮膚に触れるだけで痛がっていたが、治療後は触れるぐらいでは痛みを感じなくなり、自覚痛もなくなったことを確認して初診時の治療終了。

一回目の治療後数時間痛みを感じなかった!!

《 2診目から4診目(初診から5日から14日後) 》
 初診の治療後、5、6時間痛みを感じずに過ごせた。これまでどんな治療を受けても痛みがなくなることはおろか緩和することもなかったので非常に驚いたと来院時におっしゃっていました。治療は初診時とほぼ同様で、積聚治療の基本的な治療に加えて腹部の手術痕の治療を加える。

《 5診目から6診目(初診から19日から26日後) 》
 前回の鍼の治療後、痛みの無い日が2日間続いた。睡眠もかなり改善し、よく寝れるようになった。
 治療は、積聚治療の基本的な治療をした後に補助的に糖尿病の治療を加える。補助治療を行なうと更に圧痛が改善していくことを確認する。 

日常生活に支障が出ない程度まで改善

《 7診目から11診目 (初診から30日から66日後) 》 
 鍼灸治療ごとに一日ずつ痛みの感じない日が伸びていき、鍼灸治療後、4日間ほど痛みを感じずに生活できるほどにまで回復。また、痛みが出現しても、大した痛みではなく日常生活に支障はでない程度のものとの事。食欲も回復し。気晴らしに日中動く気力も湧いてきた。治療は、上記同様、血糖値のコントロールができていないことを考慮し、状況により長野式の血糖処置を加える。
 

【この方の治療を振り返って】

 来院時に腹部の手術痕を何箇所か指で押しただけで帯状疱疹後神経痛の痛みが緩和しました。神経痛の部位と手術をした部位は異なるので西洋医学的には何の関係もないはずですが、実際に変化したことまたそこ(手術痕)の治療をすることにより痛みが緩和した事から両者に密接な関係があることがわかります。東洋医学では手術痕や骨折、捻挫など幼い頃の傷であれ、きちんと回復していないと長期間にわたり影響(身体を冷やし)を及ぼし、身体の他の部位に症状を引き起こすと考えています。この症例は、この点の正しさを裏付ける症例のひとつです。

 糖尿病、高齢、痛みが非常に強いものだったことを考えると難治性のものであり、病院の様々な治療でも緩和しなかった事がうなずけます。もし、鍼灸治療をしていなかったら、引き続き寝てばかりの生活を続け、そのまま寝たきり生活になってしまっていたかもしれません。痛みが着実に緩和していき、患者さんの表情にも明るさが戻ってきたので、鍼灸治療に加え少しづつ簡単な運動指導を行なったところ着実に動けるようにまで回復しました。ひどい痛みは生活の質(QOL)を低下させ、寝たきり生活にもつながりかねません。一週間横になり続けるだけでも10から15%の筋力が低下すると言われています。寝たきりとなってしまうと本人はもちろん介護する側も非常に辛い思いをすることになります。介護予防のためにも是非鍼灸治療をお試しください。

 この方は11診目の直前に突然のご家族の死去に直面しました。その日から何か体調がおかしいとご家族に訴えていたそうです。11診目の来院時にお身体を診させていただいたところ明らかにいつもと異なるのですぐに循環器科を受診するように勧めた所、心臓の緊急手術となりました。突然のご家族の死去が心臓に大きな負担となってしまったようです。幸い発見が早く大丈夫とご家族から連絡をいただき安堵したのを今でもはっきりと覚えています。
 鍼灸は非常に様々な疾患に対応できます。また、医師に対抗意識を持っている方も少なからずおられます。そのためなのか、鍼灸師によっては残念ながら病院への受診を勧めず(あるいは気づかずに)に自分の所で患者を抱え続けて対応に遅れが出てしまう事もあるようです。当鍼灸院ではそのようにはせず、まず先に患者さんの利益を考え、必要と思われる場合には病院への受診を勧めるようにしています。


帯状疱疹後神経痛 【関連ページ】

上へ戻る