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帯状疱疹後神経痛の治療例1

病院での治療後も続く帯状疱疹後の痛み

【主訴】  右腰部のピリピリとした痛み・しびれ
【患者】  70代 やせ形 男性
【主訴の経過】
  半年前に突然右腰部にしびれるような痛みが発症。
  数日後にポツポツが出てきて病院に行き、帯状疱疹の診断。
  疱疹は治ったが痛みが軽くならない。
【既往歴】 
  学生時代に右膝下の骨にひびが入る
  2年前から肺気腫。現在も月に一度通院。息切れがひどく酸素ボンベの使用を勧められている。
  一年間で体重4キロ低下
【その他】
  たばこを毎日40本程度。
  食欲・食事内容良好。
  便通も良好。
【治療】 
  《 初診 》
 帯状疱疹の痛みにも鍼灸治療は効くだけでなく、肺気腫による息切れも鍼灸治療で緩和することを話すが、ともかく痛みが気になり何も出来ないのでそちらをどうにかしたいとのこと。
 年齢の割に比較的お元気な様子。
 脈拍96回/分。初診時だけでなく、治療終了回まで常に頻脈。肺気腫によるものと思われる。
 腹部は、恥骨(下腹部の骨)の際に強い圧痛。
 他の箇所は、患部の痛み、知覚鈍麻。頚部圧痛多数。
 
 お腹全体に優しく鍼を接触させた後、右の手首のツボを使い脈の調整を行なう。
 その後、腹部の圧痛より、腎虚として背中の治療を行なう。(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。腎虚と言っても、『腎臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
 陰虚状態とみて、初診であることも考慮に入れ第一方式にて背中に鍼を行なう。
 背部の治療後、患部の痛み及び知覚鈍麻の範囲が一回り狭くなる。痛みの強さは変わらない(帯状疱疹後の痛みの治療の場合、痛みの強さが軽くなってくるのは、治療の二日後からがほとんどです)。
 補助的な治療として患部に皮内鍼を貼付。皮内鍼は、一ミリ未満の短い鍼のついたシールを貼り付けて持続的に刺激を与える物です。鍼が抜ける心配はありません。

 《 2診目(初診から10日後)から4診目(初診から24日後) 》
 発症後から病院での治療中には痛みの強さは変わらなかったが、当鍼灸院での最初の治療後から痛みが少し軽くなってきたとのこと。最初の痛みを10とすると2診目の治療前の段階で7か8とのこと。
 治療は、基本的に初診時と同じ。3診目には頚部に補助治療を加える。また、4診目には、患部の肌がやや荒れてきたため皮内鍼の貼付がつらいとのことなので灸による治療に変更。下腹部(恥骨)の圧痛は改善し、おへそ周囲の圧痛が顕著になる。
 4診目の治療の際には、痛みの程度は更に3,4割減少。また、常時痛いのではなく痛みの感じない時間の方が多くなってきたとのこと。

 《 5診目(初診から31日後) 》
 ぎゅっと触ると痛いが、触らなければ痛みはなし。天気が悪いときはいくらか痛むとのこと。
 腹部は、下腹部、おへそ周囲の痛みはなくなり、みぞおちの痛みが出てくる。そのため、背部の治療は心積心虚とする(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。心虚と言っても、『心臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
 補助的に頚部や足の指の間のツボに刺激を与え、治療終了。
 日常生活には支障がなくなったので、ここで治療終了とする。

帯状疱疹後神経痛の治療のまとめ

 
 他の疾患にも言えることですが、帯状疱疹後神経痛は一日でも早めの治療の方が治ります。しかし、ほとんどの方は病院での治療が終わるまで様子見をして、更にペインクリニック等を経て鍼灸院へ来院してくださるのは大分後になることがほとんどです。
 また、高齢者の場合、様々な痛みを終始訴えている方も多いため、病院では患部も見てくれずに誤診されることもあります。
 そのような方でも当鍼灸院では、ほとんどの場合、痛みは大きく緩和します。しかし、残念ながら長期にわたり痛みを我慢されてきた場合、痛みを緩和することは出来ますが、痛みを完全にとってあげることは出来ないこともあります。そのようなときには日常生活に支障のない程度の痛みで治療を終了する事になります。
 この患者さんの場合、もう数回治療を重ねれば、完全に取ることも出来たのではないかとも思います。しかし、肺気腫になってもたばこを40本吸っている事からもわかるように好きなことを好きなだけやってぽっくり逝きたいというお考えの方で治療のためにお金と時間をあまり使いたくない、楽しく過ごしたいとのことで治療を終了としました。
 この症例からもおわかりなれるかもしれませんが、帯状疱疹後神経痛の治療の際は、患部に皮内鍼を貼付します。使用しているテープでかぶれる方はほとんどいませんが、この患者さんのようにごくまれに(当院では数年に一人程度)おられます。また、患部(痛い部分が)ちょうどアトピー性皮膚炎などで皮膚が荒れている場合なども皮内鍼が使用できないため治療効果が出にくくなります。

 いずれにせよ、様々な病院で緩和しなかった痛みが当鍼灸院での治療で大きく緩和した例は多数あります。一生つらい痛みと共存しなくてはならないとあきらめてしまっている方も多いかもしれませんが、あきらめる必要はありません。一度、鍼灸治療をお試しください。


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