パーキンソン病と鍼灸治療

多くの方が苦しんでいるパーキンソン病

 パーキンソン病はマイケル・J・フォックスやモハメド・アリなど有名人が発症したというニュースが時々話題になる病気ですが、その実態はあまり知られていない面もあります。
 有病率は人口10万人につき100人と決して多いとは言えないものの、滅多に見られない病気というには数が多い病気です。


 この病気が厄介なのは原因がまだはっきりとしていないこと、そのため治療方法も根本的なレベルでまだ解明できていないことです。
 大病院で先進治療を受けても十分な効果が得られないこともあれば、一般病院や鍼灸院での治療で驚くほど効果が得られることもあります。そのためどのような治療方法を選択するのかも重要なポイントとなる病気と言えます。


パーキンソン病に特徴的な症状

身体がこわばり滑らかに動けなくなる

 特徴的な症状は筋肉のこわばり、さらに手足が震えるなどして思うように体を動かせなくなってしまうことです。特に歩き出す時の一歩目がなかなか出ずに足がすくんでしまいます。
 パーキンソン病では、上手にモノを掴むといった基本的な動作や歩行が困難になるほか、症状が進行すると寝たきりにもなります。多くの場合、症状がゆっくりと進行していくのも特徴で、発症から寝たきりになるまでに10数年ほどの期間があります。


仮面をかぶったような表情

 人間の顔面にはたくさんの筋肉があり、それらが協調して働いて様々な表情を作り出します。パーキンソン病ではそれもうまくできなくなり無表情になることが多く見られます。そのためこの病気を知らない一般の人には愛想が悪い人とかうつ病などと勘違いされることがしばしばあります。


手足のふるえ

 パーキンソン病では、振戦(手足のふるえ)も生じます。何もしていないときに生じるのが特徴で何かを掴む時などはふるえも止まります。そのため気にはなる症状ですがあまり不便は感じないことが多いです。


転びやすくなる

 さらに特徴的な症状は、姿勢反射障害です。簡単に書くとバランスを保つことが困難になるというものです。ちょっとした動作でも姿勢を保つことが困難になり転倒しやすくなります。


前に突き進むように歩く

 前傾姿勢になってしまうためどうしても転倒しやすいのも厄介な点で、頭で思い描いている歩く速度と体が反応できる速度の間でギャップが生じやすく、突進現象と呼ばれる前かがみの状態になってしまいます。前述したように最初の一歩目はなかなか踏み出せませんが、そのあとは突き進むように動くようになります。


オン・オフがはっきりと現れる

 薬を飲み始めるようになると薬が効いている時と薬が効れた時の違いがはっきりと現れるのも症状の一つです。まるで電源スイッチを入れたり切ったりしているように感じる方が多くいます。
 しかし、薬も進歩し、持続的に薬効成分が身体に吸収されるように工夫がなされるようになりました。そのため、このオン・オフ症状は現在あまり見られなくなっています。

 

パーキンソン病のたどる一般的な経過

 症状の発症はまず片側の手の震えから歩行困難へと進行しているケースが大半です。
 物を掴みづらい、食事の際に箸をうまく持つことが出来ないといったちょっとした不都合からはじまり、歩行の際に前かがみになったり歩幅が狭く小刻みに歩くようになっていきます。
 まず体の片側から症状が現われ、進行していくにつれて両側に見られるようになるのも特徴です。
 同じような症状が現れる病気も多いので、それらと鑑別することが大事です。パーキンソン病と正式に診断されると投薬治療などが始まります。残念ながら冒頭にも述べたように症状は治療をしていても徐々に進行していき、車椅子生活、寝たきりへと進行していきます。


パーキンソン病の詳細な原因は不明

 原因については研究によっていくつかの要因が明らかになっており、特に中脳にあるドーパミン性神経細胞の変性が深く関わっていることが確認されています。この神経細胞の変性によってドーパミンの生成量が減少することで症状が現われると考えられています。


パーキンソン病と鍼灸治療

鍼灸治療は脳にも働き、バランスを取る

 鍼灸治療は、脳に刺すわけではありませんが薬の効きを良くするとともに脳にも直接的に働きかけ、機能の低下している部位を活発に活動させるとともに血流も改善することがわかっています。それとは反対に異常に機能が高くなっている部位は沈静化させる働きもあります。薬はどちらか片方にしか働きませんが、鍼灸治療は両者のバランスをとっていく治療法です。


鍼灸治療で運動機能が改善する

 パーキンソン病は完治することはありませんが、鍼灸治療を行うことによって、振戦や歩行など様々な症状が緩和したり、薬の効果がこれまで以上によく出るようになることが各種の臨床研究で明らかになっています。
 当鍼灸院も参加させていただいていた鎌ケ谷総合病院でのパーキンソン病に対する鍼灸治療の研究においても、歩行時のふらつきが軽減したり、足の運びがなめらかになったりして歩行速度が改善した方がほとんどです。また振戦が減少したり、病気に伴う憂鬱感や認知機能も回復する等様々な効果も見られました。


長期間にわたる治療が大切

 別の研究では、長期間にわたり鍼灸治療を受けていた患者は、受けていなかった患者に比べて進行が顕著に遅かったという結果もあります。発症から20年程度経つと投薬治療だけではほとんどの方が寝たきりや良くても車椅子生活になります。
 しかし、鍼灸治療を週に一度、あるいは二週間に一度の頻度で受け続けていた方には、自力で基本的な日常生活を送れる方が何人もいたそうです。
 パーキンソン病に対する鍼灸治療は、病気を完治させるということを目的とするのでなく、症状を緩和し、悪化の速度を緩め、少しでも長い期間にわたり日常的な生活を自立して楽しめるようにすることを目指しています。
 少しでもご自分やご家族の負担を和らげられるよう西洋医学的な治療に加えて補完代替医療として鍼灸治療をご活用ください。


当鍼灸院での鍼灸治療

 鍼灸治療には様々な流派が有り、鍼灸師毎に鍼灸治療の仕方が全く異なります。当鍼灸院では、東洋医学に基づいた積聚治療という方法で鍼灸治療を施しております。積聚治療は、全身に鍼を接触させて行って治療を進めていきます。パーキンソン病であれ、どんな病気でも全身の調子を整えつつお悩みの症状を治療していきます。
 積聚治療では、パーキンソン病などお身体の不調の原因は『冷え』にあると考えています。ここでいう『冷え』という言葉は物理的に冷たいというだけのことではありません。簡単に書くと生命力の低下です。
 パーキンソン病になる前に何らかの原因で身体に『冷え』が生じ、それが原因となって、徐々に冷えが高じていき症状が出てしまったと考えます。
 ですから、パーキンソン病だからといって、脳に鍼をするのではなく、全身的な治療を行います。そのようにすることにより、症状の本当の原因となっている『冷え』を取り除き、様々な症状を緩和させていきます。
 鍼灸治療を施すことにより、身体を芯から温め、冷えを取り、症状をとっていきます。
 パーキンソン病のつらい症状を少しでも緩和してい方や少しでも長期間にわたり自力での有意義な生活を送りたい方は、お早めにそして継続的に鍼灸治療を受けるようにしてください。


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