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夜尿症の治療例

『毎晩、大量におねしょをしてしまう』子供(5歳児)

【 主訴 】 夜尿症。毎晩、大量にしてしまう。
       病院への通院は無し。昼間は我慢できるが夜は全然だめ。これまで良くなることも悪化することもなく、ずっと同じ感じ
【 その他 】 出生正常。普通分娩。妊娠中の問題もなし。
        2歳の時に内斜視で手術をする
        中耳炎を一回ぐらい。交通事故無し。
        3歳の時に弟が出来る。
        いびき、歯ぎしりあり。

【 治療 】 
《 初診 》 ちょっとおどおどした感じの子供。腹診をすると下腹部に強い痛み。また、足の裏側(土踏まずの辺り)にも痛む箇所がある。そのため、腎虚として治療を行なう(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。腎虚と言っても、『腎臓が悪い』という意味ではありません)。
 全身を『てい鍼』という、先の尖っていないただの金属の棒でなでる。特に仙骨の辺りの皮膚に緊張が見られたのでは念入りに行なう。
 基本的な治療を行なった後も下腹部の痛みがかなり残っていたため、補助的に軽く『てい鍼』を足や腹部の数カ所のツボに数秒間あてる。
 補助的な治療を行なった後も下腹部の痛みは大分残っている様子だが、刺激が過剰になってしまうため、治療終了。自宅にてスキンタッチをするように指導を行なう。(スキンタッチは鍼灸師が考えた健康法です。スプーン、歯ブラシ、ドライヤーといったどこの家庭にでもある物を鍼、お灸の代わりに使います。)

《 2診目(初診から4日後) 》 

『治療三日後、初めておねしょをしなかった』

 と、ママのうれしい一言。
 腹部は前回同様下腹部に強い痛みがある。しかし、前回よりは大分痛みが軽くなっている様子。治療は前回と同様腎虚として全身に『てい鍼』をなでるように当てる。
 基本的な治療をした後、下腹部に棒灸を行なう。棒灸は直径1センチほどの練りもぐさ(太いお線香のようなもの)に火をつけてそのまま皮膚に近づけます。輻射熱で温める灸で、皮膚にくっつけることはありません。暖かいお灸で、熱くはありませんし、勿論、痕ものこりません。
 治療後、下腹部の痛みがなくなる。

《 3診目(初診から11日後)》 

1週間で3回おねしょがなかった

 
 下腹部の痛みはとれた状況のままで、良い状態を保っている様子。おへその周囲が固いので脾虚証として治療を行なう。
 補助的に下腹や足に棒灸を行なう。

《 4診目(初診から25日後)から8診目(初診から60日後)》 

3診目の鍼灸治療後4日間おねしょがなかった。その後夏休みで実家に帰省したところ毎晩おねしょをしてしまう。

 治療は、概ね前回までと同様。仙骨付近に棒灸を行なったこともあり。
 おねしょの回数は週に2,3回程度。だいたい二日に一回ぐらい。一晩辺りのおねしょの量も大分減ってきている。

《 9診目(初診から66日後)から13診目(初診から120日後)》 8診目の後、9診目までおねしょ無し。だいぶん安定してきているので
 

治療間隔をこれまでの1週間に一度から2週間に一度に伸ばして観察。

 9診目以降、おねしょの回数は2週間で0から多くても2回。水かを夜に食べると失敗する。
 治療はこれまでのものと同様。

《 14診目(初診から142日後)》 13診目以降ずっと、失敗しなかった。昨晩久しぶりに失敗してしまう。
 同様の治療をして、終了。

夜尿症の治療を振り返って

 一般的に『おねしょ』と『夜尿症』は、同じような意味合いで使われています。そのため、本文中でも特に使い分けることなく症例を記しましたが、正確には異なります。
 夜寝ている間に無意識に排尿してしまうというと言う点は同じですが、その違いのポイントは年齢です。
 

幼児期の夜尿をおねしょといい、5〜6歳(小学校入学前後)以後の夜尿を夜尿症

 というのが一般的です。おねしょの回数で使い分けることもあります。

 5〜6歳になっても頻繁に夜尿がつづく場合は、積極的な生活指導や、お薬による治療など、適切な対策をとったほうがよい場合が多いので、『夜尿症』と呼ばれています。
 小学校低学年ぐらいで、1週間に1回程度のおねしょなら特に治療の必要はありませんが、毎晩する、とかひどいときは一晩に複数回する、大量にしてしまうという子はきちんとした治療を行なう方が望ましいです。
 そのような子供の場合、そのうち治るだろうとほっておいた結果、治らずに林間学校や修学旅行の直前になって治療に来る方も当鍼灸院にはおられます。どんな疾患でもそうですが、早めに治療した方が治りは早いです。5、6年生になっても毎晩のようにおねしょをする場合、半年程度は治療にかかることもあります。また、不安にさいなまれて、せっかくの楽しい思い出となるはずの学校行事が楽しめなくもなります。
 

夜尿症の時は、早めに鍼灸治療を試してください。

 夜尿症の治療では、鍼灸治療を行なうのに加えて、生活をよく振り返り、改善をはかることも大事です。
 今回の子供の症例の場合、夜にスイカを食べることが一つの問題となりました。ママが目ざとくその原因に気づいたのでそれ以上悪化することはありませんでしたが、気づかずに食べ続けていたら一時的にもっと悪くなったかもしれません。夜の飲み物だけでなく、水分の多い食べ物や冷たい食べ物に注意することも必要です。
 また、実家に帰省した時も急激に悪化しました。楽しいことであっても非日常的な事があると子供の体調は様々な変化を示しますので、その点も注意が必要です。


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