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足底筋膜炎の治療例

【患者】 : 60代 男性
【主訴】 : 足底筋膜炎。足の違和感、痛み
【主訴の経過】 : 約3年前、トレッキングをしていて足に痛みを感じる。整形外科にて足底筋膜炎と診断される。整形外科に加えマッサージ、ジムなど様々な所で治療、リハビリを行なう。
 3ヶ月ほどで当初の痛みは緩和したが、代わりにかかとの辺りに強い痛みを感じるようになる。様々な方法での治療、転院等もしたがそのまま現在にまで至る。
【既往歴】 : 30代の頃から難聴気味
      40代 背部に出来た良性腫瘍を摘出。
【その他】 母親も若い頃から難聴。サプリは、黒酢、シジミ。嗜好品は、アルコールが毎日2合。たばこはやめたが以前は毎日20本吸っていた。睡眠は良好。

【治療】
《 初診 》 痛みは歩行や立ち続けることで悪化する。自転車でもつらい。座っていると緩和していくが、違和感は残る。
 歩くのが若い頃から好きで毎日3時間ほどウォーキングをしていた方、最近は痛みのためにあまり歩けずつらいとのこと。
 治療は基本的には他の症状の方と同じようにお腹全体に優しく鍼を接触させた後、手首のツボを使い脈の調整を行なう。
 その後、腹部の触診により、下腹部に非常に強い圧痛を認め、腎虚として背中の治療を行なう。(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。腎虚と言っても、『腎臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
 背中の治療の後、補助的に足首に治療を追加し、初診の治療は終了とする。

《 2診目(初診から7日目)から4診目(初診から21日目) 》: この間は1週間に1回の頻度で治療を行なう。毎回痛みは徐々に緩和していく。以前は冷え性がひどかったが冷え性は大分改善する。
 治療は概ね1診目と同様だが、補助的に背中の手術痕などへ暖かいお灸を加える。4診目には足首へもお灸を加える。

《 5診目(初診から28日目)から6診目(初診から35日後) 》: 4診目以降、痛みは大幅に改善し、治療後1週間経過しても楽な状態が続くようになる。治療は概ね4診目と同様。6診目で治療終了とする。

【考察】
 前述しましたが、歩くのが好きで毎日長時間歩いている方です。歩くのはもちろん建康のために良いことなので適度な運動は患者さんに日々お勧めしています。しかしあくまでも『適度な』程度にする事が大事で、年齢などを考慮して歩きすぎにならないようにしないと徐々に身体に負担がたまっていってしまうこともあります。また、健康ブームに影響されて、『健康のために歩かなくては』と義務感に束縛されすぎてしまうことも問題となることがあります。この方は、お話ししている限り、いわゆる『健康オタク』という感じではありませんでしたが、毎日3時間の歩行は年齢的にも負担となっていた事が考えられますし、痛みが少し良くなったからと十分な休息をせずにウォーキングを再開して、炎症を繰り返したことが問題と考えられます。
 下腹部の痛みから『腎虚症』として治療をしましたが、東洋医学での『腎』は足の痛みだけでなく、耳にも関係しています。比較的に若いときから難聴であったこと、そして母親も若い頃から難聴であったことを考えると生まれつき腎が不足気味だったのかもしれません。
 東洋医学では『ツボ』という単語が有名ですが、電車に例えるならツボは『駅』に当ります。北柏駅、柏駅、松戸駅と駅が何個も連なると常磐線という路線になりますが、ツボも同じで何個も連なると『経絡(けいらく)』というものになります。4診目以降加えている足首のお灸は、『腎』の経絡上にあるツボで、足首は勿論、足の裏や下腹部の痛み、冷え性にも関連しています。初診時からこのツボは使用していましたが、鍼では刺激が不足していたようなので、4診目からお灸に変更しました。
 西洋医学が浸透している現在、痛みがあるところに直接治療をしないと違和感、不信感を感じられる方もおられますが、東洋医学では、お身体の一部のパーツを診るのでなく、お身体全体を診て治療をしていきます。患部から遠く離れたところに施術して症状を緩和することもしばしばあります。ぜひ、東洋医学のそうした不思議を体感してみて下さい。


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