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顔面神経麻痺の治療例

【主訴】  顔の右半分が動かない

【患者】 50代 女性
【主訴の経過】 20日前に朝起きたらなんとなく違和感を感じる。
  そのまま過ごしたら次の日には悪化、大学病院を受診。ひどかったため10日間入院治療となる。
【既往歴】 特記するほどのものは無し
【その他】 睡眠良好。
      排便 便秘気味 1-2回/週
      朝食 パン、サラダ、コーヒー、ヨーグルト等で身体を冷やす物ばかり。昼夜はバランスもよく良好
      睡眠良好

顔面の麻痺がこのまま治らないのでは・・・・

《 初診 》
 来院時は、非常におどおどとした感じ。大きめのマスクで顔を覆い、笑顔もなく不安感いっぱいの様子。
 マスクを取ってもらうと口元が大きくゆがんでいる。
 入院して治療してもこんなに麻痺が残っていてこのまま治らないのではと不安を漏らす。
 右顔面の麻痺の他に、右耳から首、肩にかけて痛みが強く残る
 脈は、52回でやや遅め。力なく全体的に虚している感じ。
 腹部は、心窩部(みぞおち)に強い圧痛。下腹部(恥骨際)には弱い圧痛。
 心虚証として治療を行なう。(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。心虚と言っても、『心臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
 陰虚状態とみて、初診であることも考慮に入れ第一方式にて背中に鍼を行なう。
 基本的な治療の後、補助的に右耳に知熱灸(熱さを感じたら取り除くお灸)を行なう。
 治療後には、耳の痛みが大幅に改善する。また、顔の動きも幾らかよくなったので今後の治療効果に期待を膨らませて帰宅。

《 2診目(初診から16日後)から3診目(初診から21日後)》
 顔面神経麻痺は、早期治療が非常に大切なため、最初は治療間隔をあまり開けたくないのですが、年末年始を挟んでいるため約2週間開いてしまう。
 マスク無しで、しかも笑顔での来院でした。確認すると、

鍼灸治療をした次の日の朝起きると、急によくなっていた。

 そしてそのよい状態は幾らか戻ったけど前のような状態までは戻らず、よい状態を保っているとのこと。
 今回の顔面神経麻痺を起こした原因に心当たりがなく色々考えたが、一つ思い出したのが歯の治療をした後だった。治療をしたのは、右の奥歯でウミがたまっているとのこと。現在も歯の症状は変わらず、歯科医への不満も口にする。歯の問題は身体全体の様々な症状に関連しているため、早期に良い歯科医に見てもらうよう個人的に受診している腕の良い歯科医院を紹介する。
 2診目には腹診をすると、前回見られた心窩部(みぞおち)の圧痛はなくなっており、恥骨の際の圧痛のみ残っていた。そのため、腎虚症として背中の治療を行なう。3診目は脾虚証。
 基本的な治療をした後は、前回と同様に右耳にお灸をした後、歯にも補助的に治療を行なう。
 2診目の後、紹介した歯科医院を受診。治療を行ない歯の症状は大幅に改善。すごいいい先生だったと感謝される。

《 4診目(初診から30日後)から11診目(初診から120日後)》
 おおむね良い状態が続く。時により眉や目尻、口元が気になる事がある。お通じも幾らか改善し、1週間に3,4回みられる。9診目の後に病院での治療も終了となる。当鍼灸院での治療も11診目で終了。 

顔面神経麻痺の治療のまとめ

 他のどんな疾患にも言えることですが、顔面神経麻痺は早いうちに治療を開始することが大事になります。

 しかし、ほとんどの方は病院での治療が終了し、『もうこれ以上は治りません』といわれてから慌てて来院されます。残念ですがそれでは高い治療効果を期待することは難しいです。
 そのような方が多い中、この患者さんは比較的初期に来院してくださいました。
 鍼灸治療を一回することにより、耳周りに見られていた痛みが大幅に改善し、その次の日には麻痺もかなり楽になっていたのはとてもうれしいことです。とりわけ女性にとっては顔がゆがんでしまうということは、つらい症状です。不安に打ちのめされていた患者さんが2診目には笑顔で、マスクもせずに来院できるようになり非常にうれしく思ったことを今でも鮮明に覚えています。
 顔面神経麻痺は、多くの場合冷たい風(外気だけでなくエアコンも)にあたり続けることやストレスが引き金となりがちですが、この患者さんは歯の問題が一因となっていたようです。そちらをそのままにしていたのでは、ここまでは回復しなかったかもしれません。当鍼灸院では、患者さんを抱え込むようなことはせず、必要な場合には、他院を紹介しますのでお気軽にご相談ください。

違和感は改善しないことが多い

 顔面神経麻痺は、何も知らない他人から見てもわかるようなひどい麻痺は比較的に容易に回復します。しかし、麻痺が回復した後も、違和感が残ることがあります。ぱっと見では麻痺していることはわからないけれど、ちょっとつっぱているなどの違和感は残念ですが私の治療技術ではお役に立つことは出来ません。また、疲れているときや飲酒後にはそうした違和感も悪化しやすくなります。ご自分の健康管理のためのバロメーターが出来たと前向きに考え、健康管理に努めてください。

  

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