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当鍼灸院での不妊・不育症の治療例

【患者】 : 20代 男性
【主訴】 : 精子無力症
【主訴の経過】 : 来院6か月前。子供が欲しかったがなかなか出来ないため病院を受診。精子無力症と診断される。精子の運動率が低く、人工授精でも妊娠は望めない状況。それにもかかわらず病院では何も治療も出来ず経過観察とされ当鍼灸院を受診。
【既往歴】 : 幼少期のころから過敏性腸症候群となる。以降現在に至るまで常に下痢が続いている状況。幾らかでも形がある便が出るのは月に1,2度あるかどうか。
      学生時代バレーボールをやっていて、左右とも何度も捻挫を繰り返す。
      5年前、十二指腸潰瘍。
      2年前、逆流性食道炎、現在にまで至る。
【その他】 週に4日ほど、飲み会。ビールで2リットルほど飲む。寝汗あり。食事等は特に問題なし。

【治療】
《 初診 》 家族の紹介で来たためか、初診時から緊張した様子もなく、はきはきとした受け答え。長期にわたり過敏性腸症候群を患っていても、神経質なところは感じられない。やせ型。膝関節や顎関節周囲のツボに圧痛が診られる。
 治療は基本的には他の症状の方と同じようにお腹全体に優しく鍼を接触させた後、手首のツボを使い脈の調整を行なう。
 その後、腹部の触診により、下腹部に非常に強い圧痛を認め、腎虚として背中の治療を行なう。(積聚治療では、腹診などの結果から背中の治療の仕方や手順を変えています。腎虚と言っても、『腎臓が悪い』という意味ではありませんのでご注意ください)
 背中の治療の後、補助的に足及び腹部に治療を追加し、初診の治療は終了とする。

《 2診目(初診から8日目)から3診目(初診から15日目) 》: この間は1週間に1回の頻度で治療を行なう。治療は概ね1診目と同様だが、補助的に背中へ暖かいお灸を加える。
 1、2診目の以後、夜間覚醒が見られたり、肌の荒れも増加。刺激が強すぎることも考え、3診目から一般的な鍼(豪鍼)ではなく、子供にも使う尖っていない刺さない鍼(てい鍼)を使用して治療を行う。足の冷えが非常に強いため補助的に足にお灸を行う。

《 4診目(初診から20日目)から13診目(初診から103日後) 》: 3診目以降、睡眠の問題もなくなる。この期間は補助的に背部にお灸を加えることが多かった。6診目には頸部の治療も行う。11診目ごろから排便は徐々に改善し、飲酒しない日は、幾らか形のある便が出るようになる。
 精子の運動率は不変。初診時に見られた下腹部の強い圧痛も変化が乏しかったため、13診目から下腹部へ暖かいお灸をたくさん行うこととする。

《 14診目(初診から117日後)から18診目(初診から130日後)》 : 13診目以降下腹部のお灸を念入りに行い、圧痛も改善。排便もお酒を飲まなければきちんとした便が出るようになる。
 18診目の少し前に病院で精子の検査をしたところ、それまで10パーセントほどだった運動率が66パーセントにまで向上する。

 これ以降、二週に1度程度の間隔で治療を行っていると排便、精子の運動率(70パーセント)ともよい状態を保つことができるようになる。

【考察】
 バナナのような便はこれまで一度も出たことがないというほど、物心がついたころから常に下痢が続いていた方の症例です。ご両親にも確認しましたが、幼少期に特にけが・病気などの問題もないため、後天的(生まれてからの物)なものではなく、何か先天的な物が原因となって下痢を引き起こしていると考えました。下腹部の非常に強い圧痛がみられ、変化が乏しいことも『冷え』が非常に強いことの裏づけと考え、下腹部へ念入りにお灸を行うように治療を変更したところ大きな改善が見られました。
 お身体の変化を診つつ、問題の根本がどこにあるのか考え、必要なら治療方針を変更していくことも必要だと考えさせられた印象深い症例です。
 この方は、精子の運動率が改善したのち、医師から十分自然に妊娠出来るといわれたため何度か自然妊娠を試みました。しかし、残念ながらうまくいかず、人工授精に切り替えた所で治療終了となりました。人工授精がうまくいったのかどうか確認はとれていませんが、子宝に恵まれたことを願っております。


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