肘の痛み

 腰痛、膝痛とともに肘の痛みを訴える方はとても多くおられます。肘の付近に痛みを発生させる疾患は下記のように多数あります。


テニス肘や野球肘、ゴルフ肘のようにスポーツをしていたら肘が痛くなった方。
肘内症のように子どもの頃から肘に症状を訴えることの多い方。
特定の角度まで肘を曲げると肘が固まったり、激痛の出てくる変形性肘関節症の方。
腱鞘炎や肘部管症候群のように肘から指まで痛みやしびれがあり、肘が動かしずらい方等が鍼灸院に来られる方で肘の症状を訴えることの多い例です。


 肘は、腰や膝とは異なり体重が掛からない関節です。そのため初期の頃は痛みをあまり感じません。また痛みが出ても、しばらく安静にしていれば痛みを感じなくなる事が多く見られます。そのため、多少の痛みでは治療をしないで経過を観察する方が多くおられます。その結果、来院される時にはかなり悪化している場合もあります。
 肘を動かす動作は、日常生活には欠かせない動作です。テニスや野球、ゴルフをしていないからといって肘を傷めることがないというわけではありません。顔を洗う、食事を作る、食事を食べる、服を着る、洗濯をする、掃除をするなど、日常多くの場面で肘を用います。そのため特に働き者の主婦に多く見られる症状でもあります。また、使わずに安静にして過ごす事が難しいこともあり、悪化させてしまいなかなか回復しない事もみられます。

肘の痛みの原因となる疾患例

テニス肘・ゴルフ肘(上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎)

 テニス肘は、専門的に難しい言葉を使うと上腕骨外側上顆炎ともいいます。肘の外側(親指側)が痛みます。名称の通りテニスプレイヤーに多く発生します。
 ゴルフ肘は、上腕骨内側上顆炎といい、肘の内側(小指側)が痛みます。ほかに、野球肘などもあります。
 いずれも、繰り返し同じ動作をしたことにより起こります。同じ動作の繰り返しにより。特定の筋肉に負担がかかります。中でもその筋肉が骨に付着する部分に特に負担がかかり、炎症を起こしてしまいます。
 スポーツをしていないから自分は大丈夫というわけには行きません。前述したように家事などの日常動作でも同じ動きを繰り返すことがあります。その結果、同じように炎症を起こし、痛みを引き起こすこともしばしばあります。

腱鞘炎

 手指の使いすぎのために炎症を起こしたのが腱鞘炎です。腱は硬い繊維で筋肉の両端、骨に付着する部分にあります。刀と同じように腱鞘(けんしょう)というさやに収まっていますが、使いすぎる事により腱が肥厚し、さやである腱鞘と擦れあって痛みが生じてきてしまいます。親指部分の痛みが強く出ますが、同じ筋肉が肘まで来ていますので、肘の痛みを訴える方も多くいます。
 特定のスポーツをしている人だけでなく、長年家事や介護を続けている主婦が腱鞘炎になるケースが多いです。腕が痛いと家事を率先して行ってくれるご主人なら良いのですが、あまりそのような事は期待できません。痛いのを我慢して家事を続けていくので、なかなか治らなかったり、痛いほうの腕をかばって反対側の腕が痛くなってしまうこともあります。

肘内障

 肘の関節は、上腕骨と前腕の2本の骨尺骨と橈骨からなっています。靭帯の輪っかにより橈骨と尺骨はつながれていますが、肘内症はこの尺骨と橈骨をつないでいる靭帯の輪から橈骨頭がはずれてしまう症状です。
 特に2〜4歳程度の小さな子どもの腕を急に引っ張ったりすると起こりやすいです。急に泣きだし腕を下ろして動かさなくなることがあります。検査・整復するとすぐ動かせるようになり、痛みも消失します。肘がしっかりと発達する小学生位になるまでは再発しやすいので、腕を捻り過ぎないようまた、引っぱらないように気をつけて頂く事が大切です。
 肘の関節が未発達な7歳以下の子どもに多く起こる症状ですが、大人でも発症することがあります。
 鍼灸院では整復することはできません。肘内症が疑われる時はまず、整形外科や接骨院で検査及び治療(整復)をしてください。整復後も痛み等が続くときや肘の違和感などが続く際は鍼灸院にて治療いたします。

変形性肘関節症

 変形性関節症は、身体のどの関節にも起こる病気です。主に体重の掛かる股関節や膝、腰に多く発症しますので、変形性膝関節症の方が有名かもしれません。これらに比べると、変形性の肘の関節症は少ないものですが、最近はパソコン作業が増加した事等により変形性肘関節症も増えています。スマホの過度の使用も後々問題を生むかもしれません。
 加齢や長年の肘を酷使してきたことにより肘の関節の軟骨がすり減り、時間をかけて関節が変形していく病気です。進行性のため徐々に悪化していきます。
 肘を動かした後に痛くなることが多く、安静にしていれば痛みはほとんどありません。
 変形した関節に骨棘(骨のとげ)ができたり、骨の一部がはがれて関節内を動くことがあり、それに伴い痛みが悪化します。また、関節を動かす際に関節内の遊離骨(関節鼠)が引っかかると、肘がある角度でロックされた状態になり、ちょっとでも動かすと激痛が走ります。
 変形性肘関節症が進行すると肘部管症候群に移行することがあります。尺骨神経を圧迫し、小指や薬指にしびれや痛みが出たり、動かしづらくなったりします。また、肘の内側のくるぶしの後ろをたたくと、しびれや痛みが走ります。

肘の痛みの治療

病院(整形外科)での治療

 肘痛で病院(整形外科)へ行くと、まず、炎症を抑えるために鎮痛剤が処方されることが多く見られるようです。最初の激しい痛みの期間が過ぎてから、赤外線治療、リハビリ、運動指導などが行われます。
 痛みがなかなか取れないときは、神経ブロック注射や、症状がひどい場合には手術も行われます。

当鍼灸院での治療

 肘の症状は、主に使いすぎを原因として起きますが、同じくらいテニスをしている人が全員テニス肘になるわけではありません。家事を頑張っている主婦も全員が腱鞘炎になるわけではありません。
 当鍼灸院で行っている積聚治療では、病の原因を 『精気の虚』 にあると考えています。聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと 『冷え』 です。肘が痛くなる人は、肘を使いすぎているから起こるというよりもそれ以前に何らかの原因で 『冷え』 が生じ、それが原因となって、たまたまその方の弱い箇所つまり肘に症状が出ていると考えます。
 ですから、肘が痛いからといって、肘だけを治療するのではなく、全身的な治療を行います。そのようにすることにより、症状の本当の原因となっている 『冷え』 を取り除き、肘の症状を緩和させていきます。驚かれる患者さんも多くおられますが、背中や足に鍼をしていると肘や指の症状が取れて、スムーズに動くようになる事がしばしばです。
 肘の痛み(冷え)の原因は、頚椎等の外傷が原因のこともありますが、生活習慣などにあることも多く見られます。そのため、必要に応じて下記のようなお願いをすることもあります。効果的な治療を行うためにご協力をお願いいたします。

スポーツはしばらく休む

 テニス肘、ゴルフ肘、野球肘などスポーツが原因と思われる際は、しばらく練習をお休みしてください。痛みが引いてから、徐々に練習を始めてください。肘を傷めたということは、過剰に動かしていたり、無理な動きをしていた事も考えられます。あらためて、フォームを見直してみることも必要かもしれません。

出来るだけ肘に負担のかからないように工夫する

 家事が負担となっているときは、残念ながら完全に休むわけに行かない方がほとんどです。できるだけ肘に負担のかからないように工夫するようにしてください。

上へ戻る